MIZUNO | ミズノスポーツ振興財団SPORTS PROMOTION FOUNDATION

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ミズノスポーツライター賞
ミズノスポーツ振興財団では、1990年度より「ミズノ スポーツライター賞」を制定し、スポーツに関する報道・評論およびノンフィクション等を対象として、優秀な作品とその著者を顕彰しています。


第21回(2010年度) ミズノ スポーツライター賞
<制定目的>
スポーツに関する優秀な作品とその著者(個人またはグループ)を顕彰してスポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待するとともに、これからの若手スポーツライターの励みになる事を願い制定

<選考対象>
主として新聞・雑誌・単行本などを通じて書かれたスポーツ分野の報道・評論・ノンフィクション等で、当該年度に発表されたもの

《選考委員》
・委員長 岡崎 満義 氏(元(株)文藝春秋取締役、「Number」初代編集長)
・委 員 杉山 茂 氏(スポーツプロデューサー 元NHKスポーツ報道センター長)
・委 員 高橋 三千綱 氏(芥川賞作家)
・委 員 ヨーコ ゼッターランド 氏(スポーツキャスター)
・委 員 水野 正人 氏((財)ミズノスポーツ振興財団 会長)
                           ※順位不同
《対象者》 日本人および日本在住の外国人


<受賞者及び選考理由>   ※所属・年齢などは当時のものです。

ミズノ スポーツライター賞 最優秀賞
(トロフィー、副賞100万円)
「幻の甲子園 昭和十七年の夏 戦時下の球児たち」
早坂 隆(はやさか たかし) 文藝春秋
 戦争を理由に昭和16年に中止となったはずの「全国中等学校優勝野球大会」が、どうした風の吹き回しか翌17年に再開された。しかし、主催は朝日新聞社から取り上げられ、国の主催する「大日本学徒体育振興大会」の一環という位置づけだった。戦局は悪化する一方、野球への圧力も厳しくなる中で、それでも名門校を中心に16校が勝ち上がって熱戦を繰り広げた。
著者は歴史のなかで黙殺されているこの大会に注目し、出場16校のトーナメント形式による全15試合を克明に再現、出場した選手たちの当時の思い出や甲子園出場後の足跡もたどりながら、戦時下の甲子園大会を鮮やかに描き出している。とは言え、これはあくまで変則的な大会であり、戦後、復活した甲子園大会の数にカウントされることはなかった。「幻の甲子園」と言われる所以である。
 筆者の試合の叙述はなかなか巧みで真に迫っている。たぶん、スコアブックを丹念に読み込んだのであろう。それを決して豊富とは言えない当時の報道資料と付き合わせ、かつての選手ならぬ「選士」たちの聞き書きと照らし合わせて試合を再構築して見せてくれる。
総じて言えば、幻の甲子園を通して時代の実相を浮かび上がらせた労作であり、2010年のスポーツ・ノンフィクションの収穫といっていい作品だと思う。


ミズノ スポーツライター賞 優秀賞
(トロフィー、副賞50万円)
「Rの輪 広陵野球の美学」
山田 良純(やまだ よしずみ)  南々社
 広島の広陵高校といえば野球の名門校として知られているが、その実、夏の甲子園ではきっちり40年周期(昭和2年、42年、平成19年)で決勝戦に進出し、かつ敗れてきたという不思議なチームである。本書はその昭和42年(1967年)と平成19年(2007年)の二度の大会に焦点を当て、三原、中井というそれぞれの監督を軸に、活躍した選手たちの群像を配し、迫真の描写で試合の経過と選手の内面を追求している。
 この作品の特色は、選手や監督の心のひだに迫ろうとしていることである。試合の流れの中で成功・失敗の決定的な瞬間を彼らが何を考えて行動し、何を感じ取ったかを、立場の違う人々の証言を組み合わせて浮かび上がらせている。描写が選手の内面に食い込みすぎるといささかフィクショナル(小説的)な雰囲気も出てくるが、激しく肉体がぶつかり合うゲームの背面でどんな複雑、微妙な、また不可思議な心理的な展開があるのかを著者は描こうと試みており、それがこの作品に深みを与えている。

ミズノ スポーツライター賞 優秀賞
(トロフィー、副賞50万円)
「心の聖地 −スポーツ、あの日から−」
編集委員室:小沢剛、原田寛ほか24名  共同通信社
 2011年の日本体育協会設立100周年に向けて、スポーツ人が生きてきた心の軌跡を掘り起こし、スポーツの原点を再発見しようとした年間大型連載企画。有名選手だけでなく、陰でスポーツを支えた人々や、先駆者として道を切り開いた選手にもスポットライトを当てた。
毎週1本、計50本配信し、全国の35紙に掲載された。
 第1回の主人公は1964年東京オリンピックの聖火最終ランナーであった坂井義則。広島生まれの坂井は原爆投下の日に生を受けたということでアトミックボーイとも呼ばれ、平和の象徴とされた。彼の聖地は国立競技場。聖火台から見下ろしたフィールドには94カ国の選手団がつどっていた。まさに平和の具現化であった。最終ランナーの肩書が人生を規定した。しかし、就職したテレビ局で中継を担当したミュンヘン、アトランタのオリンピックはテロの標的になった。また、模範的な生き方を貫こうとしてきた坂井にとって、ビジネス化したスポーツの裏表を肯定することは心の聖地を否定するようなものだったのかもしれない。
 第2回以降も、白人以外で初めて米プロバスケットボール選手になった日系人のワット・ミカサ、登山家の加藤滝男・保男兄弟、オグリキャップの装蹄師三輪勝など、興味深い人物を掘り起こしている。競技別で見ると、プロ野球6人、水泳3人、サッカー2人など、36分野で50人(組)。外国人が数人登場している。
 大型企画として読みごたえがあり、写真もきれいだ。囲みのデータや取材こぼれ話などもいい。企画としての重量感があり、取材力が低下しつつある地方紙にとってはありがたい記事と言える。