スピードスケートスーツ 開発ストーリー
2010/01/21
![ATHLETE'S ROAD[アスリーツ・ロード]MESSAGE from TOP ATHELETE](http://www.mizuno.co.jp/ouen/images/logo_athletes.gif)

前回のトリノオリンピック開催を機に、それまで「裸感覚や軽量、表面平滑」などに主眼を置いて開発されてきたスピードスケートスーツ設計に、新たな視点と開発手法が持ち込まれた。ミズノが主に目指したのは、「スケーティング時の姿勢・動作のサポートをスーツが担う」ということ。たとえばすべてを伸縮素材にするのではなく、伸びの少ないパワー素材を適所に用いて効果的な姿勢保持や動作サポートを実現すれば、スケーティングはより理想型に近づく。求めなければならないのは、どうカッティングし、どのパーツにどのような素材を用いるべきか。その追求は、「ヴァーチャルボディデザイン」というウエア設計手法に基づき実行された。3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)によるスケート動作の再現と、そこから得られる「皮膚の伸縮量、方向、速度、また身体が発揮するパワー」などの詳細な解析データをもとに考案されたスケートスーツは、理想的な姿勢保持に役立ち、パワーロスを最小限にとどめ、五輪選手たちのスピードへの挑戦を見事にサポートしたのである。
今年、バンクーバーオリンピック用のスピードスケートスーツにも、この「ヴァーチャルボディデザイン」がいかされている。従来より、姿勢・動作サポートに強い威力を発揮していたウレタンラミネート素材の効果的な配置をさらに精密に割り出し、体幹部で空気の流れが最初にあたる部分をフラットにするため、胸部への採用面積を増やした。また、部分によっては サポート力よりも膝を前に出しやすいフォームを重視したいというアスリートの要望を反映し、たとえば膝部分を別素材に変更するといった改良も加えられた。
最大のポイントは、楕円形熱プレス樹脂素材の採用。ウレタンラミネート素材と同様のハイパワーストレッチ性を有すると同時に、ウレタンラミネート素材にはなかった、通気性や放熱性を持つ新素材であり、この素材の最適な配置によって、姿勢保持機能をキープしながら快適性をアップ。
トリノモデルに比べ約4.9%の抵抗削減にも成功した。「ヴァーチャルボディデザイン」は、ミズノの中でも、動きや締めつけに関する最先端の取り組み。スケートウエアの構造は次々と他の競技ウエアに取り入れられ、陸上レーシングウエアなどにも「姿勢ナビ」として反映されている。
動作サポートという発想と、科学を駆使した動きの解析は、ミズノ独自の着眼点。それは新たな試行錯誤を経て、確実に進化を遂げた。さらなる低抵抗も実現し、オリンピックという大舞台に備えるアスリート達を支えている。
- 辻中克弥
- ミズノ商品開発本部 技術開発部
- ウエア開発課 クラフトマン
選手の思いや意見が開発の根本です
「短距離スケーターはとくに、スーツからの締めつけがあると、スケーティング中、自分の筋肉の隆起がわかる、といって、きつい目のスーツを好みますね」と語るのは、ミズノ技術開発部のクラフトマン、辻中克弥。素材配置と各パーツの面積比率は、基本的にどの選手用も同じだが、微妙な調整は個々に対応する。直前のフィッティングで要望が出れば、現地でパーツごと取り替え、縫製し直すことも。対応力がミズノの大きな魅力だという。「我々開発の人間も納品して終わりとは思っていないし、販促のメンバーもトップシーズンは必ず選手とともに行動し、きめ細かな対応をしています。選手の思いや貴重な意見に触れる機会も多く、それには必ずきちんと応えるようにしています」。
http://www.mizuno.co.jp/ouen/2010/01/spskate2.html